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激動のトルコ

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少し古いですが、サッカーのヨーロッパ選手権(EURO2008)でトルコが戦前の予想に反してかなり活躍したのと、中東地域におけるトルコの位置づけっていうのが何となく知りたいと思っていた時に、新聞の書評欄で取り上げられていた激動のトルコ―9・11以後のイスラームとヨーロッパを随分前に読み終えていて、内容を簡単にまとめておいたので、自分用にメモ。

EUの仲間入りを果たしたいという長年の夢がトルコにあるそうで、一方EUとしても、若年層が多く労働力確保という意味以上に、地政学的に対中東/イスラム圏という観点から重要な位置づけにあるトルコは本来内に取り込みたい所だったようです。

EUの理念としては、かつての敵を内に取り込むというものがあったそうで、それを行うことで長期の安定を図ってきたという歴史があるようで、こういうのは全く知らなかったのでそれだけでも勉強になったのですが、そういうEUの理念というのが、少しゆらぎつつあって、結果的に、トルコがEUに加盟することに対して、反対する国が増加しているそうです。

その背景に各国のそれぞれの事情があり、大きく分けて「経済問題」と「文化の違い」という2つ。

まず経済問題については、失業率の上昇で、その背景に移民の増加があってそれが目の敵にされているということで、この本を読み終えたのが3ヶ月ほど前ですが、その頃にくらべてEU圏内の経済面の低調傾向からすると、ここしばらくはこの問題は解決しないでしょうね。

あともう1つの文化の違い。

9.11以前は、EU各国の中で、多文化を受け入れる風潮があったそうですが、9.11を境にして、モノ(単一の)カルチャーという流れが主流になってきて、ムスリムに対する嫌悪感が増えつつあり、イスラム教 vs キリスト教 という図式が”結果的に”成り立ってしまっている所があるみたいです。

これ1冊で、トルコのことについては深く知ることはもちろん出来ないですが、EUに加盟したいという長年の夢がそう簡単には実現出来ない様々な事情が理解出来た意味では、入門書として読むには丁度良かったかなぁと思います

激動のトルコ―9・11以後のイスラームとヨーロッパ
内藤 正典
明石書店
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by h5y1m141 | 2008-11-27 21:14 | 読書メモ

アフガニスタン―戦乱の現代史

アフガニスタン―戦乱の現代史 (岩波新書)
渡辺 光一
岩波書店
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何故、アフガニスタンで紛争が絶えないのか、ものすごく不思議で、本書を読んでもそれがすぐには理解出来たわけではないけれど、ある程度その火種となるものがうっすら見えたように思います。

アフガニスタンに限らず、この地域の紛争の背景にありそうなのが、同じ国の中に、民族、宗教を異にする人達が混在しており、そしてアフガニスタンの場合にさらに問題を複雑にしそうなのが、超大国である国口(アメリカやロシア)の思惑、中東地域での存在感を示したいサウジアラビア、イラン、そして近隣のパキスタンのそれぞれの国の思惑や、その国の人達から操られている権力者同士の争いというのが、一番の要因なのかなと思います。

その象徴的と思える事を、タリバーン(タリバン)の存在を中心に自分なりのまとめを。

イラク戦争の際に、タリバーン(本書ではこう書かれていましたが、TVなどの報道だとタリバンという言い方のほうが馴染みがあるけど、本書にならってとりあえずこの表記でいきます)がよくクローズアップされたように思うけど、何か過激な集団というイメージしかなかったのですが、その部分について結構丁寧に解説がされていました。

パキスタン周辺のアフガニスタン難民(パシュトゥーン人)が、イスラムの神学校「マドラサ」でイスラム原理主義を学んだそうで、ペルシャ語で神学校の学生を「ターリブ」といい、その複数形が「タリバーン」とのことで、元は神学校の学生を意味しているそうです。

パキスタンにいるこのタリバーンが何故、アフガニスタンに行く必要があったかというと、中央アジアの天然ガス資源の存在が1つ読み解くヒントになるみたいです。

どういうことかというと、アフガン、イランの両国と国境を接するトルクメニスタンの豊富な天然ガスを、国外に運び出すにあたりパイプラインの敷設が必要で、そのルートが2つ(イラン経由、アフガン経由)考えられたそうです。

ここで、アフガニスタン1国だけではなく、隣国のパキスタン、アメリカが絡んできます。

まず、アメリカ側の事情を。

アメリカとしてはイランを敵国とみなしてて、イラン経由のルートはさけたいけど、アフガン経由は、アフガニスタン国内の治安情勢が不安定であることを懸念してその解決策をどうにかして考えないといけなかったそうです。

アフガニスタン経由のパイプラインをどうにかして作っちゃえば、天然ガスの利権にあやれるし、ついでに、イランの力も押さえ込めるから、アフガニスタンの治安の問題が解決できればなぁーという課題があったそうです。

そこで、親米国家のパキスタンに話をもちかけることになったそうです。

そして、ここでパキスタンの事情を。

この頃政権についたブット首相は、実は以前(90年)に一度退陣に追い込まれた経験を踏まえて、同じ過ちを繰り返さないように、政権の基盤をしっかりしたいという思惑があったらしく、「イスラム神学者教会」を率いるファズール・ラマンという人物との関係を強化することになったそうです。

※この教会はデーオバンド学派というもので、タリバーンの宗教思想もこのデーオバンド学派のようです。

そして、ブット首相の懐刀である内相と「イスラム神学者教会」を率いるファズール・ラマンがこれを解決する案を思いつき、「祖国の秩序を回復する」という大義名分を掲げて、タリバーンの若者を焚き付けて、彼らはアフガニスタンに派遣される。

大義名分の元、タリバーンがアフガニスタンに進出するが、元は単なる神学校の生徒であるわけで、そう簡単には秩序回復は実現できるわけでもなく、その後、タリバーンの若者に混じってパキスタンの軍兵士、軍事情報部員などが身元を隠して、タリバーンとしてアフガニスタンに入り込むようになったそうですが、このあたりは、パキスタン政府が巧みに行っていたそうです。

その後はタリバーンが国内の各拠点を制圧していくそうですが、ここで問題になるのが真のリーダーとなるべく人間の不在。

この当時ウマルという人物が最高指導者としていたが、彼には崇高な精神も、アフガニスタン復興のための明確なビジョンもない人物だったそうで、その後はタリバーン(パシュトゥーン人)が中心の国を作るために、他の民族を殺戮して、自分たちが国家の中枢に居座る事になるのですが、タリバーンの若者達には、国を運営するような知識、経験もなく、あるのは暴力による支配だけという状態で、その後数年は恐怖政治による国家支配が続いたそうです。

まぁこうやってタリバーンという存在を中心にその周辺諸国、超大国、民族、宗教という組み合わせで考えても、アフガニスタンが不安定なのもちょっとうなずけるように思うし、こういう図式が成り立ちそうな他の紛争地域も、同じような構図で読み解けそうな気がします。
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by h5y1m141 | 2008-11-03 19:05 | 読書メモ

テロリストは教養がない人がなるのか?

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明日、明後日と朝から夜おそくまでの勤務になることもあって、今日の午前中はお休みっていう感じだったのですが、代々木から北参道駅まで散歩した後、駅のすぐ近くのスタバで古代文明と気候大変動 -人類の運命を変えた二万年史を読んでいたのですが、冷静に考えると今月あんまり書評書いてないので、少し前に読み終えた本をちょっと取り上げます。

「テロの撲滅のために、貧困層の人を助けよう」

ということを、疑いもなく信じていましたが、テロの経済学によると、テロリストは決して貧困層の人間ではなく、かなりの高学歴で知的水準が高い人物達が、自分たちの政治的思想の実現のために起こしてる行動であり、その行動の拡大をしなければいけない場面で、貧困にあえいでいる人達を言葉巧みにたきつけているようです。

テロリズムの解決策として絶対的な手法というのはおそらくないだろうけど、少なくとも著者が提言されているように、単なる民主主義のおしつけではなく、
市民的自由の欠如が世界中のテロリズムの主たる原因であるように見える。国内および外国の両方における市民的自由の支援が、対テロ戦争での兵力の一つとするべきである。
テロの経済学 P.111より
ということがある程度の力を持つんじゃないかと思います。

アフガニスタン周辺が、また何だか不安定な状況になっており、タリバンの存在がまたとりあげられていると思いますが、テロリストがどんな人物で、いったい何を成し遂げようとしているのか、一歩踏み込んだ理解を得ようと思った場合に、違った視点を与えてくれる本ではないかなぁと思います
テロの経済学
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2 こういう分析も必要です。

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by h5y1m141 | 2008-09-17 21:28 | 読書メモ

イラク戦争に費やされたコストは果たして?

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以前から予約していた本が最近届いて、タイミング良く国際政治に関するものが続いていて、先日のコーカサスのやつに引き続き、世界を不幸にするアメリカの戦争経済 イラク戦費3兆ドルの衝撃をやっと読み終えました。

戦争開戦の前の当初試算では「アメリカの負債は17億ドルだけです」という話がとあるテレビのインタビューでされていたそうですが、実際にはかなり泥沼化したイラク戦争の本当のコストは、計量出来る控えめな数値で3兆ドルではないかと、著者のジョセフ・E・スティグリッツさんが膨大、かつ、つぎはぎだらけの様々なデータからこの数値を算出されたそうです。

当初目論見から、あまりにもかけ離れた結果になっていますが、詳細は本書を読んでもらうとして、個人的に印象に残った箇所を3つとりあげます

1.戦地から戻った兵士に関する問題
2.一時的にということで戦地に派遣された州兵
3.ずさんな会計

1.に関しては、イラク戦争固有の出来事として、外傷性脳損傷(TBI)の生存者がかなりの数いるらしく、こういう人に対する医療費の捻出だけではなく、こういう方達の介護をする家族の負担や、こういう方達が病気になったことによる生産性の喪失....といった部分でかなりのコストがかかっていると著者は指摘しています。

2.については、本来だったら各州にいるはずの兵士がイラクにかり出された結果、本来の業務を担う人材不足により結果的にハリケーンカトリーヌによる被害の復旧に支障が出たことも指摘しておりこのコストもばかにならないのかと思います

3.については、将来のコストを”見えなく化”するために、その時点での支出を低く見せる現金主義による会計処理をした結果、会計の不透明さを生み出しており、これが原因でいったいいくらのコストがかかっているのか国民の目を欺いていると指摘しています。

3兆ドルという数字の妥当性については、賛否両論あるかもしれませんが、1つ言えそうな事はアメリカ人は、戦争に限らず物事を始めることについてはとても機敏に動くものの、それが本当にうまくいっているかどうかというチェック機能を働かせるということについては、お世辞にも上手ではなく、それが今の状況を生み出したのかなと本書を読んで感じました

世界を不幸にするアメリカの戦争経済  イラク戦費3兆ドルの衝撃
ジョセフ・E・スティグリッツ リンダ・ビルムズ
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おすすめ度の平均: 4.5
5 石油高の元凶はイラク戦争という視点はユニークだ!!
4 アメリカの支払った代償はあまりに大きい
5 アメリカ版特別会計
4 戦争会計の重要さ
5 右翼も左翼も必読の書

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by h5y1m141 | 2008-08-25 21:42 | 読書メモ

日本がアメリカと世界を救う!

日本がアメリカと世界を救う!を先日読み終えて、なかなかまとめる時間が取れなかったのですが、今日は土曜日に仕事だった代休が取れたのでやっとまとめる事が出来ました。

著者の視点から見た、アメリカの大局的な戦略というか国益というものが何なのかを伺いしれたような気がします。

具体的には本書でも何度か言及されているのですが、アメリカが進めている 民主化、自由化の根底として、ドル市場の拡大があり、その拡大を押し進めるために

「資本の意志」
「力の意志」

という2つのキーワードを使って著者の方はアメリカの方法論について説明されています。

資本の意志というのは、お金のことを指し、力の意志は、軍事力や政治力を指されているようで、アメリカの大統領が交代になるごとに、この資本の意志が前面的に打ち出されるのかそれとも、力の意志が前面的に打ち出されるのかという違いはあっても、基本的な部分は民主化、自由化の根底にある、ドル市場の拡大を実現させるための手段に過ぎないようです。

■中国とアメリカの関係
このドル市場の拡大という視点で、中国とアメリカとの関係について触れており、中国の現在の経済発展をアメリカとしては許容しており、バブル気味な所があるようですが、仮にそれが崩壊した場合に、中国には内部に抱えている問題(例えば役人の汚職や、富裕層と貧困層との間での経済格差)が地方では以前から少しづつ発生していた暴動が、景気を牽引していた沿岸部でも倒産や銀行破綻による失業者の増加で暴動が飛び火する可能性があるため、中国としてはそういう不満を外部に向けるようにする必要があるそうです。

その敵国として、日本ではなく台湾を「1つの中国」の名の下に攻撃するのではということが書かれており、そのための法案(反国家分裂法)もすでに可決されているようです。

これを想定しているかどうかはわかりませんが、中国が台湾に武力行使した場合にアメリカが軍事加入するための法案(台湾関係法)もあるそうで、万一アメリカvs中国という図式の戦争になった場合、本気で勝てるとは中国の人民解放軍のトップは思っていないそうですが、一部には強硬派もいるようで、人民解放軍の中でクーデターが起こり、軍自体が崩壊し、イラクなどと同様の内戦状態になるが、最終的にはアメリカを中心とした多国籍軍が登場して治安維持&民主化を図り、国民主導ではあるが、最終的にはアメリカの傀儡政権を誕生させるというのが著者の読みだそうです。

この状態になれば、アメリカの国益であるドル市場の拡大も叶うということですが、もしもこのシナリオが本当ならばちょっと怖いですが、こういうシナリオを描くのが、5大シンクタンクのようで、
先に述べた保守系シンクタンク、ランド研究所の報告書「アメリカとアジア」の結論「中国が完全にアメリカの市場になる」とは、こういうことなのである。(P.118より)
とあり、これは前に読んだ第五の権力 アメリカのシンクタンクで、似たようなことが書かれていたのでこの辺りについては結構信憑性があるかなぁと思います。

■イラク戦争の目的

アメリカのイラク戦争の目的が石油利権ということが書かれる事が多いと思いますが、著者の方はちょっと違った視点を持っており、イラクが石油の決済通過をドルからユーロに変更したといことについて言及されています。

元々はイラクはドルで決済していたのですが、フランスがイラクに対してユーロ決済を持ちかけたという本当かどうかはわからないですが、フセイン大統領がユーロに切り替えたそうで、OPEC加盟国がイラクにならって石油の決済通貨を仮にドルからユーロに切り替えると、
当時の原油価格で計算してアメリカは1日につきおよそ3億ドルの赤字国債が発行できなくなったはずだといわれる。(P.139より)
となり、自国通貨の価値が減少するという自体は避けたいため、別のお題目(大量破壊兵器)でイラクに侵入したということのようです。

大局的に考えれば、本書のシナリオ通りに進むことも、現実的にありそうで、ちょっと怖いと思ったのですが、日本とアメリカの関係を語る上で個人的には年次改革要望書についての意見が本書で触れて欲しかったなぁ..

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by h5y1m141 | 2007-11-12 14:57 | 読書メモ