アフガニスタン―戦乱の現代史

アフガニスタン―戦乱の現代史 (岩波新書)
渡辺 光一
岩波書店
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何故、アフガニスタンで紛争が絶えないのか、ものすごく不思議で、本書を読んでもそれがすぐには理解出来たわけではないけれど、ある程度その火種となるものがうっすら見えたように思います。

アフガニスタンに限らず、この地域の紛争の背景にありそうなのが、同じ国の中に、民族、宗教を異にする人達が混在しており、そしてアフガニスタンの場合にさらに問題を複雑にしそうなのが、超大国である国口(アメリカやロシア)の思惑、中東地域での存在感を示したいサウジアラビア、イラン、そして近隣のパキスタンのそれぞれの国の思惑や、その国の人達から操られている権力者同士の争いというのが、一番の要因なのかなと思います。

その象徴的と思える事を、タリバーン(タリバン)の存在を中心に自分なりのまとめを。

イラク戦争の際に、タリバーン(本書ではこう書かれていましたが、TVなどの報道だとタリバンという言い方のほうが馴染みがあるけど、本書にならってとりあえずこの表記でいきます)がよくクローズアップされたように思うけど、何か過激な集団というイメージしかなかったのですが、その部分について結構丁寧に解説がされていました。

パキスタン周辺のアフガニスタン難民(パシュトゥーン人)が、イスラムの神学校「マドラサ」でイスラム原理主義を学んだそうで、ペルシャ語で神学校の学生を「ターリブ」といい、その複数形が「タリバーン」とのことで、元は神学校の学生を意味しているそうです。

パキスタンにいるこのタリバーンが何故、アフガニスタンに行く必要があったかというと、中央アジアの天然ガス資源の存在が1つ読み解くヒントになるみたいです。

どういうことかというと、アフガン、イランの両国と国境を接するトルクメニスタンの豊富な天然ガスを、国外に運び出すにあたりパイプラインの敷設が必要で、そのルートが2つ(イラン経由、アフガン経由)考えられたそうです。

ここで、アフガニスタン1国だけではなく、隣国のパキスタン、アメリカが絡んできます。

まず、アメリカ側の事情を。

アメリカとしてはイランを敵国とみなしてて、イラン経由のルートはさけたいけど、アフガン経由は、アフガニスタン国内の治安情勢が不安定であることを懸念してその解決策をどうにかして考えないといけなかったそうです。

アフガニスタン経由のパイプラインをどうにかして作っちゃえば、天然ガスの利権にあやれるし、ついでに、イランの力も押さえ込めるから、アフガニスタンの治安の問題が解決できればなぁーという課題があったそうです。

そこで、親米国家のパキスタンに話をもちかけることになったそうです。

そして、ここでパキスタンの事情を。

この頃政権についたブット首相は、実は以前(90年)に一度退陣に追い込まれた経験を踏まえて、同じ過ちを繰り返さないように、政権の基盤をしっかりしたいという思惑があったらしく、「イスラム神学者教会」を率いるファズール・ラマンという人物との関係を強化することになったそうです。

※この教会はデーオバンド学派というもので、タリバーンの宗教思想もこのデーオバンド学派のようです。

そして、ブット首相の懐刀である内相と「イスラム神学者教会」を率いるファズール・ラマンがこれを解決する案を思いつき、「祖国の秩序を回復する」という大義名分を掲げて、タリバーンの若者を焚き付けて、彼らはアフガニスタンに派遣される。

大義名分の元、タリバーンがアフガニスタンに進出するが、元は単なる神学校の生徒であるわけで、そう簡単には秩序回復は実現できるわけでもなく、その後、タリバーンの若者に混じってパキスタンの軍兵士、軍事情報部員などが身元を隠して、タリバーンとしてアフガニスタンに入り込むようになったそうですが、このあたりは、パキスタン政府が巧みに行っていたそうです。

その後はタリバーンが国内の各拠点を制圧していくそうですが、ここで問題になるのが真のリーダーとなるべく人間の不在。

この当時ウマルという人物が最高指導者としていたが、彼には崇高な精神も、アフガニスタン復興のための明確なビジョンもない人物だったそうで、その後はタリバーン(パシュトゥーン人)が中心の国を作るために、他の民族を殺戮して、自分たちが国家の中枢に居座る事になるのですが、タリバーンの若者達には、国を運営するような知識、経験もなく、あるのは暴力による支配だけという状態で、その後数年は恐怖政治による国家支配が続いたそうです。

まぁこうやってタリバーンという存在を中心にその周辺諸国、超大国、民族、宗教という組み合わせで考えても、アフガニスタンが不安定なのもちょっとうなずけるように思うし、こういう図式が成り立ちそうな他の紛争地域も、同じような構図で読み解けそうな気がします。
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by h5y1m141 | 2008-11-03 19:05 | 読書メモ
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