その数学が戦略を決める

数学で犯罪を解決するの訳者あとがきで、オススメになっていたその数学が戦略を決めるなのですが、実はこの本を1、2ヶ月ほど前に読み終えていたのですが、書評を書こう、書こうと思いつつ今に至ってしまいました。

インターネットの普及により、大量のデータを簡単に収集しやすくなったことによって、統計的に適切な処理を行う”絶対計算”というものを活用しやすくなったことで、人間の直感による決定よりも、状況によっては、大量のデータから解析された結果を信頼した方がより望ましいということが生じているようです。

いくつかの事例があったのですが、2つほど興味を引かれたのでご紹介します。

1つ目は、キャピタルワンという会社の事例で、例えば、クレジッドカードの解約の申し出をしてきた顧客から電話がかかってきた場合に統計的に裏付けされたアルゴリズムを活用して、その顧客からの収益が実は今後見込めそうな場合には、解約を慰留させる専門チームに電話が転送され、それほど価値がないと判断された顧客に対しては、自動音声サービスにまわされるということを実践してかなり収益をあげているそうです。

2つ目は「イザベルソフトウェア」という誤診をなくすための医療版のGoogleのようなものという表現が適切かどうかわかりませんが、
このソフトは本当に「以下の可能性は考えましたか?」というページを表示してくれる。他の可能性について早めに指摘してくれるだけで、効果はかなりのものだ。
その数学が戦略を決める p.134より
というようなことを提供してくれます。

誤診の最大の原因というのが、診察に当たった医者が他の可能性に目を向けないことで、「はやすぎる結論」に至ってしまうことらしく、本書でも書かれていましたが、人間は新しい証拠となるものがでても、自分の信念に反するものはつい軽視し、自分の信念の裏付けとなるものに注目しがちであるという点からしても、こういうイザベルソフトウェアのようなものは確かに誤診を防ぐ意味では有効かなと思います。

こういう、データ至上主義とか、分析こそ一番っていうようなニュアンスのことが書かれている内容を読むと、

人間 < コンピューター

みたいなことを思い浮かべるかもしれませんが、著者の方は決してそういうことを言いたいつもりで書かれているわけではありませんので、その点はご心配なく。

人間の直感や経験の部分が活かされるべき所と、こういう大量の結果から算出される結果を相互に活用するのが今後大切であるということを著者は説いており、一部関連する所を引用しておきます。
人間に残された一番重要なことは頭や直感を使って統計分析にどの変数を入れる/入れるべきではないか推測することだ
その数学が戦略を決める P.169より
と書かれており、さらに
今後の意思決定者ますます直感とデータに基づく意思決定とを何度も切り替えつつ仕事をするようになる
その数学が戦略を決める p.266より


これからインターネットの普及によって、大量のデータと直面する事が大なり小なり増えるだろうから、そういう状況に陥る前に、どういう心構えを持っておくべきかというのを知っておくには参考になる本だと思います。
その数学が戦略を決める
イアン・エアーズ
文藝春秋
売り上げランキング: 168
おすすめ度の平均: 4.5
5 平凡な統計手法で意外な結果が!
5 これを読んで統計を学ぼうと思いました
5 人間に残された一番重要なことは、頭や直感を使い、仮設を生み出すこと
4 統計や数学が苦手・無縁と思っている人におすすめ
4 大量データの驚異=脅威

[PR]
by h5y1m141 | 2008-05-01 20:58 | 読書メモ
<< ブログの更新が滞っていた理由 数学で犯罪を解決する >>