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『フラガール』を支えた映画ファンドのスゴい仕組み

結婚する前は、うちの奥さんとデートで映画を見に行くということはほとんどなかったのですが、このまえもいのちの食べかたを見てきたように、最近は見る機会も増えてきました。

見ていて、たまに思うのが、映画ってそもそも儲かっているのかなぁーという素朴な疑問があって、そんな自分の疑問について、ある程度答えてくれそうな『フラガール』を支えた映画ファンドのスゴい仕組みという本を読みました。

■そもそも映画っていったいどの程度の割合でヒットするの?

映画そのものは必ずヒットするものではなく5本上映したら

1本:大ヒット
2本:収支トントン
2本:赤字

という勝率になり、”水もの”であるというのはあるそうですが、1本大ヒットすれば、残りの4本分をカバーできるくらいの収益が見込まれるそうなので、プラスマイナスの触れ幅の大きい(ハイリスク/ハイリターン)なもののようです。

■映画ってあまり儲からない?

ここを読み解くのに2つのことがキーになりそうです。

1.制作委員会方式の課題
2.PA費の存在


1つめの制作委員会方式について簡単に説明すると、制作→配給→興行→コンテンツ二次利用という流れのどこかで制作会社、テレビ局、広告代理店などが自分たちが得意とする領域でのみ出資し、複数の事業者が集うことでリスク分散をはかりながら、収益を得ようとするモデルらしいです。

ちょっと見た感じでは、良さそうですが、これの問題点として

- いわゆる業界関係者のみが参加しているために、制作予算が少ない(多くて10億程度。ちなみにハリウッドの場合には数十億から多いと100億規模があつまる)
- 従来では考えられなかったようなビジネスモデル(例えばでいうと、インターネットによる映像配信とか)が世の中に出た場合に、利権調整が難しく、新しい事業への展開に参入できず、機会損失を招いてしまう。
というのがあるそうです。

もう1つのPA費というのは、Printing & Advertising Expenseの略で、プロモーション費のことを指すそうでうすが、かつては、公開後にヒットした場合に、そのヒットの度合いに応じてPA費を増やしてしまい、結果的に収支をきちんと管理できなかったというのがあったそうで、いってみれば営業売り上げは良いけど、営業利益率の悪い会社のようなものですね。

こんな状況を
自分は金融とモノづくりの橋渡しをする通訳のような仕事をしていると認識している
フラガールを支えた映画ファンド P.163より
という金融が専門家である著者の方が映画ファンドというものを立ち上げることで、ハイリスク/ハイリターンな状況からミドルリスク/ミドルリターンくらいにおさえようとしたそうです。

映画自体のヒットの予測は難しいけれど、その収益構造を外部の人間が入って適切な評価をしながらうまくコントロールすることでビジネスとしてうまく成り立たせるという部分については、少なからず参考になりそうな感じがしました。
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岩崎 明彦
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4 映画ファンドの仕組みが理解できます
5 これならハリウッドに勝てる!(かも) 日本のコンテンツビジネスは金融で飛躍できる
5 映画ファンだけではなく、ビジネスマンも興味をもつ作品です。

by h5y1m141 | 2008-04-07 20:20 | 読書メモ
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